投資対象となる金融商品は世の中にいくつもありそうですが、長期積立分散投資で資産をつくることができる金融商品は果たして何があるのか?そんな疑問をもつ人も多いと思います。
今回は、通貨取引を含めコモディティが、長期積立分散投資に向いているのかを探っていきます。
長期積立分散投資に最適な金融商品を探る…
その1【株式投資編】
その2【コモディティ編】 ← この記事
その3【投資信託編】
この記事の目次
前回のおさらい
その1【株式投資編】← 前回の記事
個人が株式の個別銘柄を対象に投資をしていくことは、以下の理由で、長期積立分散投資には不向きだとわかりました。
- 銘柄数が多い
- 選定がむずかしい
- 分散がむずかしい
- タイミングがむずかしい
- 長期保有がむずかしい
- 損切がむずかしい
今回は、通貨取引を含めコモディティが、長期積立分散投資に向いているのかを見ていきます。
通貨やコモディティは長期投資には不向き
すでにタイトルに『不向き』と書いてしまっていますが…
通貨といえば、FX(外国為替証拠金取引)をイメージする人が多いと思いますので、まずはFXについて簡単に説明します。
Foreign Exchangeの略で、円やドル、ユーロ、ポンド、フランなどの通貨を交換する取引のことです。担保のような『証拠金』を証券会社などの取り引き業者に預け、これをもとに最大25倍までのレバレッジをかけることができます。
たとえば証拠金として100万円を預けると、2500万円までのポジションが持てる、ということです。つまり、100万円で2500万円分の取り引きができるので、それだけ100万円を効率的に運用できるということを意味します。ただ、25倍のレバレッジで2500万円分のポジションを持った場合、リスクも同様に25倍になります。
ちなみにFXでは、『買い』だけではなく『売り』からもはじめることができるため、『2500万円分を買う』ではなく『ポジションを持つ』と表現しています。
また、外貨に投資する方法は、外貨預金、外貨建て債券、外貨建て投資信託などもありますが、このFXがこれらの外貨建て金融商品と決定的に違うことは、通貨そのものを取引する点です。
外貨建て債券は、取り引きするのはあくまでも債券です。また外貨建て投資信託では、取引対象は投資信託であり、それらの取引通貨が外貨建てになる、ということです。つまり、損益は為替レートに左右される部分もありますが、基本的には、外貨建て債券なら債券、外貨建て投資信託なら投資信託での値動きが損益に影響をおよぼします。
しかしFXでは、通貨そのものが取引対象で、損益は為替レートの値動きになります。つまりFXは、為替レートの値動きを狙って利益を追求する商品ということです。
FXがどういうものか、ざっくりイメージできたところで本題に入ります。
- 資産価値が増大しない
- 取ったり取られたりゼロサムゲーム
- トレンドやその転換を予測できない
①資産価値が増大しない
たとえば株式投資の場合、企業価値の増大が収益の源泉であり、企業価値であるキャッシュフロー創出力が将来にわたって増大すれば、株価も上昇します。
為替レートは異なる通貨の交換比率にすぎず、通貨は単にモノを買うための道具であり、この通貨自体が価値を増大させることはありません。
これは、金や原油などのコモディティも同じです。
金は『資産のラストリゾート』などといわれ、ポートフォリオに入れることを推奨する人もいますが、金自体はなんら価値を生みません。
価値を生み出さないということは、20年後30年後も価値は変わらず、増えもしないし減りもしないということです。投資の目的が、資産を減らさないことであるならよいのかもしれませんが、資産を増やすことであるなら、長期保有をしても増えない資産は、長期投資には不向き(無意味)です。
②取ったり取られたりゼロサムゲーム
株式では企業活動の結果として『配当金』を生み出し、債券ではクーポンが付与されて定期的に利子というキャッシュを生み出します。しかし、金はこういった価値を生み出さず、単に『価格』の上下動を捉えて売買するだけです。
通貨やコモディティでは、みずから資産価値を増大させることはなく、自分が利益を得るためには他者から利益を奪う必要があります。これは『ゼロサムゲーム』と呼ばれており、自分の利益は他者の損失、自分の損失は他者の利益になります。
③トレンドやその転換を予測できない
通貨は単なる道具のため、そもそも『フェアバリュー』という考え方が存在しません。
『本質的な価値』『適正価格』のことで、企業が将来稼ぎ出すキャッシュフローの予測値を現在価値に割り引くことで得られる理論価格のことです。このフェアバリューに対して現在の株価が割高であれば、フェアバリューに近い水準まで売られます。逆に、フェアバリューに対して現在の株価が割安なら、フェアバリューに近い水準まで買われます。
通貨では『本質的な価値』はわからないので、需給バランスで価格形成が行われます。
このため、上昇トレンドになると買いが買いを呼び、その流れがしばらく続きます。下降トレンドでは売りが売りを呼び、下降トレンドがしばらく続きます。
これは2000年から20年間のドル円のチャートです。
通貨にフェアバリューがないからこそ、大きなトレンドが発生すると、ひたすらその方向に動いていく傾向にあるのが、為替レートの値動きの特徴です。
まとめ
資産の価値が増えずに、このように、価格のトレンドや転換の事前予測がほぼ不可能な中、取ったり取られたりという世界で、長期的に資産を増やしていく(勝ち続ける)ことは非常に難しく、通貨やコモディティは長期積立分散投資には不向きだと思います。
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では、また~